不動産業界は不動産売買の仲介、不動産管理、デベロッパー、不動産コンサルティングと、
「不動産」という括りは同じだが、業務内容は全く異なります。
例えば不動産の賃貸管理のみを行う不動産業者の場合、宅建士が社員にいない場合もあり、
売買の仲介までに行う段取りや手続きを知らないという場合もあります。
一方、不動産売買の仲介のみを行う不動産業者は、家賃保証業者のことや、家賃滞納者への対応、
建物の不具合があった場合のノウハウがなかったりします。
※ちなみに地方ではアパートの管理戸数も多くないため、
不動産売買の仲介をやりつつ、不動産管理業も一緒にやっているパターンが多いです。
今回の記事は不動産売買、不動産管理のそれぞれの欠点を解説します。
不動産業者のものなら、この意味を即理解できる内容だ。
結論!知られたくない欠点は以下の内容です。
■建築・建築設備の知識がない
■家賃滞納で貸主・借主間で揉め、事件性が伴う場合は不動産会社で間に割って入ることができない
■具体的に個人への税金の計算をしてはいけない
■登記ができない
■相続人から相談があっても、相続人の調査をすることができない
■担当者のスキルによって大きく結果が変わる
この記事を読むとわかること
・不動産業者の得意分野・不得意分野がわかる
・各専門家の役割を理解できる
・不動産業者が対応できる範囲を知ることができる
目次
建築・建築設備を知らないということ
まずはじめに取り上げるのが、建築・建築設備を全く知らないという不動産業者は多くいるということです。
なぜなら建築関連は一級建築士などの建築士の分野になるからです。
例えば中古住宅を購入したいというお客さんが不動産会社へ相談へきて、
「購入後は○○○のように改築したいんです」という話があった場合、
話はしっかり最後まで聞くが、具体的な工事の方法や見積の作成は工務店へ依頼等をして対応していただくことになります。
その場で「これはいくらぐらいです!」といえればベストなのだが、
「確認しますね!」と一歩対応が遅くなります。
○○周辺の地価はどれくらいか?この中古住宅は肌感覚でいくらぐらいなら買い手がつくかなどの
不動産的なことは強いが、建物の構造や改築の手法や技術などの建築的なことは知らないのである。
アウトソーシングをして対応するため、もちろんお客さんの要望には応えているが、
今後、よりいっそう空き家が増えるなかで、建築知識が弱いのは致命的といえる。
※不動産業者のなかにも、建築士が社内にいる会社や、リフォームを商品としている業者の場合は、この欠点を補えている
さらに建築・建築設備の知識が弱いのは、不動産管理においても大いに影響してくる。
不動産管理においては入居者から建物の不具合があれば、まず管理会社へ連絡するのが一般的な流れだ。
しかし管理会社は建築設備の知識がないため、現地へ直接言っても対応が難しいため、
電話で話を聞いて、専門業者へアウトソーシングをして対応することが多いです。
そうなると例えばアパートの2階から急遽水漏れが発生し、
1階のお部屋の人に水漏れの被害を受けたという電話がかかってきたとする。
水漏れは即対応が必要な案件であるが、建築設備の知識がないと水漏れの原因が、
給水管なのか、給湯管なのか、それとも排水管なのかという原因を特定することができず、
結局は専門業者でみてもらうようになります。
しかし専門業者も繁忙期の場合や災害が発生した場合は、直ちにという対応は不可能だ。
そうなると水漏れの原因がわからず、2階の入居者の水の利用を制限するなどの対応が必要となり、
迷惑がかかってしまいます。
すでに揉めている案件は、不動産業者では手をつけられない
こうした場合、すでに紛争となっている場合は不動産業者ではなく、弁護士の先生が間に入って紛争解決を行います。
不動産業者は、各当事者間が円滑にことが進むように、事務手続きやアドバイスを行うが、
事件性を帯びたあとの処理は「法律事務」という扱いになり、弁護士法違反を問われます。
つまり問題となっているものに関しては、
ノウハウがあっても「弁護士」でないと行ってはいけない業務ということになります。
例えば賃貸アパートの入居者が家賃の滞納が発生したとする。
管理会社の対応としては、家賃滞納の督促業務として、家賃滞納の事実を文書等で告げ、支払いを促します。
ここまでは不動産業者でも対応可能です。
しかし入居者が支払いを「拒否」していることがわかり、
紛争となっているにもかかわらず不動産業者が「交渉」を継続したり、
内容証明郵便により督促を行う場合は「法律事務」となり、弁護士法違反となります。
【内容証明郵便とは】
内容証明郵便は、いつ、いかなる内容の郵便物を、
誰が誰に宛てて差し出したのかを郵便局が証明する制度である(郵便法48条)
内容証明郵便は「確実に配達したこと証明する郵便」であるため、
本人が受け取り拒否をしても、相手に到達していたことを明らかにする文書となる。
個人へ具体的に税金の計算ができない
これは無償でやったとしても税理法違反となります。
一般的な説明、例えば「長期譲渡所得=譲渡価格ー(取得費+譲渡費用)ー特別控除で算出できるよ」という説明は問題ありませんが、
「Aさんの譲渡価格は○○○万円で、それぞれ計算していくと長期譲渡所得は○○万円になるよ」という説明は違反行為になります。
不動産業者は登記の申請ができない
不動産というものは「権利」がつきものであるため、不動産業者でこれらをすべて解決してもらえると思うが、
売主・買主の代理で登記をできるのは司法書士の先生が担当となります。不動産業者では登記申請の代理はできません。
登記の申請は、登記書類の準備ができて、売買代金が確かに支払われていることを確認したら司法書士にて申請を行います。
ゆえに引き渡し日は金融機関にて売主・買主、不動産業者・司法書士の先生で最後の手続きを行います。
※融資を利用する場合は、司法書士に依頼して登記をする必要があるが、融資を利用しない場合は売主・買主共同で申請をすることも可能である
また相続登記のように自分で行えるものもあるため、都度確認しよう。
相続人から相談があっても、相続人の調査をすることができない
相続財産の多くが不動産であり、なかには相続の相談事を不動産会社へする方もいるだろう。
今後、相続する不動産を売却するのにあたり、どれくらいで売れるかの相談ごとはよくあります。
売却に向けて売れる価格を提示することは何ら違反はなく、問題はありません。
しかし戸籍を取って、相続人の調査や遺産分割協議を行うことは司法書士の担当になるため、
不動産業者で踏み込むことは違反行為になります。
売買価格は担当者のスキルで決まる
不動産価格は最終的には「売主」の希望価格で市場に出します。
不動産業者が1000万円の評価を出しても売主が「2000万円でないと売らない」となれば、2000万円で市場に出るのである。
しかし優秀な営業マンが、「2100万円で欲しいという人がいたな~」っていう人がいれば、
希望価格で売却することができるため、担当者によって売買価格が変わることもあることを理解しよう。
上記の件は絶対ではなく、明らかに高い物件であれば、どんなに優秀でももちろん買い手は現れない。
少々高いだろうな~というラインで契約を決めることができれば、不動産業者の役割としては合格である。
以上、不動産業者のできる範囲と、できない範囲について理解いただけただろうか。
専門的なところはアウトソーシング等を利用しているが、専門業者に頼っているばかりだと、
ノウハウが蓄積されず、不動産業者としてのさらなる成長の機会を失ってしまうことはひとつデメリットとしてある。
今後の不動産業者は、不動産という商品を扱うだけでなく、
生活を担う「ライフプランナー」として、どれだけ変化できるのかが試される。